毎日毎晩,ネットサーフィンしていても,興味もなく見向きもしない場所がある。だが,そこでの主役は,あなた,だ。あなたをいつ殺すか,あなたをどうやって殺すか,あなたの死体の捨て場所はどこにするか…。
京都府警亀岡署は21日,インターネットの掲示板に「殺して欲しい」などの文面を掲示したとして,大阪府高槻市内の女性(23)を脅迫容疑で亀岡区検に書類送検した。インターネットの文言をとらえて脅迫罪で立件したのは全国で初めて。ホームページには殺したい相手である主婦の名前や住所などが書き込まれ,約300件のアクセスがあった。8月初めに同署から掲示を知らされた主婦は不安になり,車の停車音にもおびえる日々が続いたという。
きっとこの殺したい相手であった主婦は,インターネットに接続することはなかったのだろう。自分の知らないところで,自分を殺害して欲しいという言葉が自由にやり取りされている図は,まぁちょっと恐怖であるかもしれない。だが,これは他人事ではまったくない。憎々しい人がいて,その人の名前と住所を掲示板に書き込むことなら(書き込んだ人間の身元は最終的には割れるだろうが)簡単にできる。またワイヤードの荒涼とした大地には,けっして訪れることがない場所,というのが存在する。行こうと思っていても行けない,どんなに彷徨い歩いてもたどり着かない場所というのがあるものだ。もしそこが,自分の殺人計画の拠点だったら?
警察がどうやってこの書き込みを知ったのかわからない。まぁおおむね,その掲示板を見た人からタレコミがあったのだろう。警察とて,ワイヤードの倫理に踏み込むことは至難の業だ。だがある日,いつもと違う観点でリンクをたどっていて,ふと何気なく行き着いた先で,自分についての殺人計画が練られていたら,誰に助けを求めたらいいのか。荒涼の大地の片隅に,そんな場所があるかも,しれない。
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